第4回若手難民研究者奨励賞 選考経過報告(講評)

20166

文責:選考委員会

 

(1)応募状況

今回で第4回目の実施となった奨励事業には、12件の応募がありました。今回も、応募者の専門や研究対象・地域などが多岐にわたり、専攻に関しては、人類学、法律学、国際関係学、社会学、地域研究、開発学、看護学など、研究対象としてはモンゴル、タイ、チベット、ミャンマー(ビルマ)、バングラデシュ、ベトナム、ブータン、シリア、タンザニア、南スーダン難民/国内避難民、研究対象地域・調査地としては、日本、モンゴル、タイ、インド、パキスタン、ヨルダン、タンザニア、オーストラリアなどが挙げられていました。

申請者の所属は、昨年同様、大学院生(修士課程/博士課程)が多数を占めましたが、大学教員、研究員の方もいらっしゃいました。応募者の所属の地域的分布としては、首都圏の大学から6名、関西、中部、東北地方の大学から各1名、また、本年は海外からも3名の応募がありました。

 

(2)選考過程

研究・専門分野が異なる研究者(5名)と実務者(1名)から構成される6名の選考委員を選任しました。審査は、1)選考委員による個別審査と、2)考委員会の開催と協議の2段階で進められました。

まず、第一段階として、各選考委員が個別に書類審査を行いました。応募書類および参考資料の内容をもとに、各選考委員が各申請者を次の5つの選考基準項目をもとに点数とコメントをつけました。選考の基準は、【1.研究の目的】【2.研究の独創性】【3.研究の計画性】【4.学問・社会への貢献度】【5.研究者の若手度】とし、それぞれの項目を総合的に勘案したうえで採点と順位づけをしました。

第二段階として、選考委員会を開催し、各選考委員の得点および順位付けを基に、選考委員から高い評価を受けた応募者について、選考委員全員で一人ひとりの申請内容を協議し、受賞者の選定を行いました。

 

(3)全体講評

全体的な傾向としては、昨年同様1)既存究にはなかなか見られない、斬新な専門やアプローチで難民研究に取り組もうとする申請、また2)難民の主体性やレジリエンスに焦点を当てた、難民自身の視点を重視した難民研究を志す申請が多く見受けられ、引き続き日本における難民研究のすそ野の広がりと既存の研究領域を越えたの難民研究の可能性を垣間見ることができました。

 受賞者の選考にあたっては、以下の2点を特に重要な審査項目として選考を行いました。

第一に、研究の意義、目的、研究手法、研究計画が明確であり、それらの間に整合性や研究実績があるか、それによって来年4月末までという短期間に学術的な成果論文を完成させられるかという判断です。本奨励賞の選考の特色として、研究者のみならず実務者が選考委員に入っているため、研究と実務の双方の観点から、研究テーマや研究方法、調査内容の妥当性や実証可能性が厳しく審査されました。

第二に、難民研究に対する学術的貢献度と、実際の難民状況の解明や改善に資するかという社会的貢献度についても議論されました。難民研究の特性にかんがみ、for refugees(難民のための難民の視点に立った研究か、難民の権利保護に資する研究か、)という観点からも、審査が入りました。


 その結果、以下の4名を受賞者として選出しました。

 

(4)受賞者4名の講評(50音順での発表)

 

1.    小宮理奈(こみやりな):現在タンザニア滞在

(現)国連難民高等弁務官事務所職員/今回研究者として応募:専門は法学、難民保護

難民キャンプにおける法の支配と難民の主体性―タンザニア西部ニャルグス難民キャンプにおける伝統的司法制度の研究を通し、様々な司法形態と、難民キャンプにおける難民の主体的な司法へのアクセスを明らかにする』

・選出理由として:実務も経験されており、研究者としても代替紛争解決に関する知識的基盤等の関連実績があること、申請テーマの学術的貢献度も高く、成果論文が期待できると結論づけた。

   

2.斉藤和美(さいとうかずみ):現在タイ滞在

 タイ国立カセサート大学教員:専攻は文化人類学、地域研究

逃亡と再定住北部タイにおける擬制的難民カヤンの重層的エスノスケープ

 ・選出理由として:申請地域研究に関する知見と蓄積が十分に見受けられること、これまでの論文についても問いと答えが明確であることから成果論文が期待できると結論づけた。

 

3 片雪欄氏(ピョン・ソラン)

 大阪大学大学院人間科学研究科、専攻:人類学

 『インド・チベット難民の生計戦略に関する比較研究北インド・ダラムサラにおける長期化難民と新規難民を事例に―』

 選出理由として:人類学に基礎を置きながら、難民研究史に関して押さえている研究計画。チベット難民に関する研究実績があり、かつ明らかにした問いを継続して研究をされている。成果論文が十分に期待できると結論づけた。

 

4.Munkhbat Dorjsuren (ムンフバトドルジスレン):現在モンゴル在住

 モンゴル国立大学、専攻人権法、難民法、モンゴル法

ゲル地区からの問い移住する民の定住生存戦略と行政との確執に見る権利と政策

 選出理由として:難民の枠を超え、社会の転換期を迎えた社会での移住が抱えるギャップや人権問題を捉え、モンゴルでの政策提言や他の地域での問題にも示唆を持つ、意欲的な研究であった。今回初の学部生の受賞となったが真摯にこの問題に取り組みたいという姿勢を強く感じ、将来への期待が最も高い方であった。 

 

 以上4組の受賞者の研究は、今後の日本における難民研究の発展に十分に寄与しうるもの、また実社会の難民問題への貢献度も高いものになると評価され、またその研究成果を短期間で論文にまとめられる実力が各受賞者にあると判断されたため、受賞に至りました。

以上

 

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2011年の内戦勃発以降増大するシリア難民への対応は、今や国際社会の緊急課題となっています。こうした状況を踏まえ、難民研究フォーラム(RSF)では、79日に公開シンポジウム「増大する難民の受け入れニーズと実態~シリア難民を中心に~」を開催しました(後援:真如苑)。EU・北米・日本の難民受け入れ事情に詳しい専門家をお招きし、各国の現状の比較を通じて、今後の受け入れ政策の展望を検討しました。参加者は140名を超え、難民受け入れに対する関心の高さが伺えるものとなりました。

 

《第一部》「第4回若手難民研究者奨励賞」受賞式及び研究概要報告


公開研究会として、第4回若手難民研究者奨励賞受賞者の表彰と研究概要報告が行われました。

選考結果・講評は[]をご覧ください。           

 

《第二部》公開シンポジウム


1.基調講演

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ドイツにおける難民政策と国内での動き/久保山亮(専修大学兼任講師)

中東での情勢不安により、異なる民族・文化背景を持った難民が増加するドイツでの統合問題について取り上げ、職業訓練等による市場統合へ重点を置いたドイツの難民受け入れ政策が紹介されました。労働力としての難民の受け入れは、受入国側の利益にもなることが示唆され、一連の政策への期待が寄せられました。

 

2.各登壇者発表

EUの難民受け入れの展開と動向/八谷まち子(元九州大学法学研究院教授)

急激な難民の流入により、受け入れの管理・統制が取れずにいるEUでは、トルコとの協力体制強化、犯罪対策部との連携、非EU国との連携等で管理体制の立て直しを行うことが早急な課題として報告されました。

 

北米を中心としたシリア難民受入れ状況/石井宏明(難民支援協会常任理事、難民研究フォーラム話人)

トルコと北米への現地視察から、難民受け入れにおける民間団体の役割の重要性が指摘され、特にカナダの官民連携での受け入れ支援には大きな期待が寄せられました。同時に、難民条約に地理的制限を設けるトルコでは、一時的滞在許可証での受け入れや、食料・高等教育支援が行われていることが言及されました。

 

日本~シリア難民を中心とする難民の受入れの動向/難波満(シリア難民弁護団弁護士)

各国と比較して、日本での難民受け入れが極端に少ない点に関して、厳格な審査基準により認定数が少ないことや、地理的要因や定住支援の不足、言語・文化的な壁により、申請数自体が少ないことが説明されました。

 

3.パネルディスカッション

後半には、モデレーターとして藤本俊明神奈川大学講師が加わり、パネルディスカッションが行われました。参加者からは受け入れ国での難民の社会統合についての質問が多くあげられ、これに対して講演者からは、ドイツでは依然難民受け入れを支持する声が多いこと、北米・ドイツでは就労支援が充実しており、難民の在留国での自立に期待が持てる旨が報告されました。550万近いシリア人が難民状態となっている現状で、傍観者でいることの疑問も提示され、日本での民受け入れの展望についても、一歩ずつでも実践的に行動を起こしてゆく勇気を持つことの重要性が確認されました。


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3回若手難民研究者奨励賞 選考経過報告(講評)

文責:選考委員会

 

(1)応募状況

3回となった今回の奨励事業には、11件の応募がありました。今回も、応募者の専門や研究対象・地域などが大変多岐に富んでいました。具体的にみると、専攻に関しては、人類学、政治学、社会学、地域研究、開発学、国際協力学、日本語学、映像学などがあり、研究対象としては中国、ミャンマー、アフガニスタン、南スーダン、ネパール難民/国内避難民、研究対象地域・調査地としては、日本、タイ、ウガンダ、エチオピア、イラン、フランス、ドイツなどが挙げられていました。

申請者の所属は、昨年同様、大学院生(修士課程/博士課程)が多数を占めましたが、講師、研究員の方もいらっしゃいました。応募者の所属の地域的分布をみますと、首都圏の大学から5名、関西の大学から5名、海外から1名でした。

 

(2)選考過程

選考に当たっては、研究・専門分野が異なる研究者(4名)と実務者(2名)から構成される6名の選考委員を選任しました。審査は、?選考委員による個別審査と、?選考委員会の開催と協議の2段階で進められました。

まず、第一段階として、各選考委員が個別に書類審査を行いました。応募書類および参考資料の内容をもとに、各選考委員が各申請者を次の5つの選考基準項目をもとに点数とコメントをつけました。選考の基準は、【1.研究の目的】【2.研究の独創性】【3.研究の計画性】【4.学問・社会への貢献度】【5.研究者の若手度】とし、それぞれの項目を総合的に勘案したうえで採点と順位づけをしました。

第二段階として、選考委員会を開催し、事前に回収した各選考委員の得点および順位付けを基に、選考委員から高い評価を受けた応募者について、選考委員全員で一人ひとり協議をし、受賞者の選定を行いました。

 

(3)全体講評

全体的な傾向としては、?既存研究ではなかなか見られなかったような斬新な専門やアプローチで難民を研究しようとする申請、また?難民の主体性やレジリエンスに注目した、難民の視点を重視した難民研究を志す申請が多く見受けられ、日本における難民研究のすそ野の広がりと既存の難民研究の超克の兆しを垣間見ることができました。

 受賞者の選考にあたっては、以下の2点を特に重要な審査項目として選考を行いました。

?第一に、研究の意義、目的、研究手法、研究の進め方のすべてがはっきりしているか、それらの間に整合性があるか、それによって来年4月末までという短期間に学術的な成果論文を完成させられるかという判断です。本奨励賞の選考の特色として、研究者のみならず実務者が選考委員に入っているため、研究と実務の双方の観点から、研究テーマや研究方法、調査内容の妥当性や実証可能性が厳しく審査されました。

?第二に、難民研究に対する学術的貢献度と、実際の難民状況の解明や改善に資するかという社会的貢献度が、研究者の視点と実務者の視点の双方から議論されました。難民研究の特性にかんがみ、for refugees(難民のための難民の視点に立った研究か、難民の権利保護に資する研究か、)という観点からも、審査が入りました。

 

その結果、以下の4名を受賞者として選出しました。

 

(4)受賞者4名の講評(50音順)

 

 朝隈芽生(あさくま めい)さん(大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程)の研究は、イランにおけるアフガニスタン難民を事例として、難民の自主運営学校が難民にとって果たす「居場所」の役割を分析することで、難民の社会的包摂/排除の様相を明らかにしようとするものです。解決法がないといわれている、長期化する難民、都市難民の状況について、難民当事者を能動的な主体とみなして当事者の視点から難民を研究しようとするアプローチは、難民のレジリエンスを示そうとする、学術的にも実務的にも貴重な試みであると評価されました。

 

安齋耀太(あんざい ようた)さん(東京大学大学院総合文化研究科修士課程)の研究は、今日に至るまで先進国で難民庇護政策が進んでいないという国際社会の課題について、新しいアプローチでその理由を分析しようというものです。この課題の背景に、そもそも難民庇護の法的根拠である庇護権と近代国民国家の理念が矛盾をはらみながら制度化された点に注目し、その矛盾を成立させた社会的条件を、制度化の過程を分析しながら考察するものです。自身のこれまでの研究実績からの研究の発展性がしっかり見えること、庇護権研究に関して先行研究の切り口とは異なる斬新な視点と手法(社会学研究)を用いることで、学問的にも実務的にも新しい視点を提供できる可能性を秘めていることが高く評価されました。

 

 直井里予(なおい りよ)さん(京都大学東南アジア研究所)の研究は、映像ドキュメンタリー制作という手法を用いて、タイにいるカレン難民がタイ難民キャンプおよび第三国の定住地に移動し定住する過程を追い、カレン難民が移動と定住の中でどのような日常生活を送り、社会関係を構築しているのかを分析しようとするものです。「映像人類学」、ドキュメンタリーという独創的な手法により、文章では説明しきれない複雑な人間の行為や文化の変容、相関関係を伝えようするアプローチは、難民研究および実務に新しい解釈と視点を提供しうるだろうという、高い期待が集まりました。

 

 村橋勲(むらはし いさお)さん(大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程)の研究は、ウガンダにおける南スーダン難民の生業・経済活動を明らかにすることで、難民の生活戦略を社会経済的に分析しようとするものです。「難民が避難先においていかにして生活と社会ネットワークを再構築していくのか」という生活戦略を明らかにすることは、国際社会が援助以外の持続的難民対応手法を探るという実務面でも意義深いという意見が出されました。また、すでに数年にわたって行ってきたフィールド調査を基にした研究計画であるため、調査研究の実現可能性が高いと判断されました。

 

 以上4組の受賞者の研究は、今後の日本における難民研究の発展に十分に寄与しうるもの、また実社会の難民問題への貢献度も高いものになると評価され、またその研究成果を短期間で論文にまとめられる実力が各受賞者にあると判断されたため、受賞に至りました。

以上

この度は、第3回若手難民研究者奨励賞にご応募頂き、誠にありがとうございました。本年度は総勢11組の応募がありました。

選考委員会による厳正な審査の結果、以下4名が第二回若手難民研究者奨励賞受賞者に決定致しました(以下50音順)。  


朝隈 芽生 (大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程)

「長期化する難民状態における人々の社会的排除と包摂―イランにおけるアフガニスタン難民による学校運営を事例として―」

 

安齋 耀太  (東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学博士前期課程)

「庇護権と国民国家の関係性に関する社会学的研究―戦後西ドイツの難民庇護政策の起源 ―」

 

直井 里予 (京都大学東南アジア研究所所属) 

「カレン難民の移動と定住をめぐる日常実践生活と社会関係の変容―映像ドキュメンタリー制作に伴う考察―」

 

村橋 勲 (大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程)       

「ウガンダにおける南スーダン難民の経済活動と生計戦略―キリヤドンゴ難民定住地の事例から―」

2回若手難民研究者奨励賞 選考経過報告(講評)

文責:選考委員会

 

 若手難民研究者奨励賞は今回が第2回目の実施となりましたが、昨年度を上回る15件の応募がありました。応募は日本全国および海外からも出され、専門・研究対象なども大変多岐に富み、難民研究のすそ野の広さや可能性の大きさを改めて考えさせる内容であり、選考委員一同うれしい驚きを感じました。

 

(1)応募状況

申請者の所属は、大学院博士課程・修士課程所属の大学院生から、助手、非常勤講師、准教授の方にまで多岐にわたりました。応募者の所属の地域的分布をみますと、首都圏の大学から9名、関西の大学から4名、海外から2名(オランダ、米国)でした。また、本年は(国籍を問う申請項目がないため推測ではありますが)留学生・外国籍の方からもご応募をいただいたようでした。また、申請者の専攻も昨年同様多岐にわたり、社会学や人類学、法律学、国際公共政策、国際協力、日本語教育、さらには医学や科学・工学までと実に幅広く、それに伴い、研究対象や研究テーマも多岐にわたっていました。

 

(2)選考過程

研究・専門分野が異なる、研究者(5名)と実務者(1名)から構成される6名の選考委員が選考に当たりました。審査は、(1)審査委員による個別審査と、(2)選考委員会の開催と協議の2段階で進められました。

まず、第一段階として、各審査委員が個別に書類審査を行いました。応募書類および参考資料の内容をもとに、各審査委員が各申請者を次の5つの選考基準項目をもとに点数とコメントをつけました。選考の基準は、【1.研究の目的】【2.研究の独創性】【3.研究の計画性】【4.学問・社会への貢献度】【5.研究者の若手度】の五点で、それぞれの項目について採点をしました。

第二段階として、選考委員会を開催し、事前に回収した各選考委員の得点を合計し、総得点数の高かった上位8名について、各審査委員からのコメントを踏まえながら一人ひとり協議をし、受賞者の選定を行いました。

その結果、総得点の上位4名が、選考会においても全選考委員から総合的に高い評価を受けたため、4名を今回の受賞者に選定いたしました。

 

(3)全体講評

 今回の選考は、以下の3点を特に重要な審査項目として選考を行いました。

?第一に、研究の意義、目的、研究手法、研究の進め方のすべてがはっきりしているか、それらの間に整合性があるか、それによって来年4月末までという短期間に学術的な成果論文を完成させられるかという判断です。受賞者4名は皆様、この点が大きく評価されました。本奨励賞の選考の特色として、研究者のみならず実務者が選考委員に入っているため、たとえば研究者の視点から研究計画に高い点数がつけられた方にも、実務者の観点から、研究テーマや研究方法、調査内容の妥当性や実証可能性に厳しい意見が出されることもありました。もちろん、その逆もありました。

?第二に、難民研究に対する学術的貢献度と、実際の難民状況の解明や改善に資するかという社会的貢献度が、研究者の視点と実務者の視点の双方から議論されました。難民研究の特性にかんがみ、For refugees(難民のための、難民の視点に立った研究か?難民の権利保護に資する研究か?)という観点からも、審査が入りました。

?以上の二つの視点から検討を行い、最終的に残った上位候補者については、【若手難民研究者の育成のために研究を奨励する賞】という本事業の趣旨にかんがみ、若手性の高い方を優先させて受賞者を決定しました。若手性とは、年齢だけではなく、難民研究に携わってきた年数やキャリア等を総合的に勘案しました。

 

その結果、以下の4名を受賞者として選出しました。

 

(4)受賞者4名の講評(50音順)

 

土田千愛さんの研究は、ケニアへのソマリア難民の大量流入を事例として、「国際難民保護規範と国内での政策実施の間のかい離」の原因を研究しようというもので、テーマ設定や研究目的・意識・手法、成果論文執筆までの研究・調査実施工程がすべて明確であったことが評価されました。これまで世界中でさまざまな角度から取り組まれてきた研究テーマであるため、どれほど独創性ある研究視点からの調査と分析を実施できるかが試されます。本研究のための資料収集や聞き取りが現地調査によってどれほど達成されるのかという(特に事務者からの)懸念もありましたが、先行研究の考察と調査の事前準備をしっかり行ったうえで有用な現地調査を行い、研究成果を出せるものと判断しました。

 

 三谷純子さんの研究は、難民・移民の混合移動や難民状況の恒久的解決をめぐる近年の難民研究のホットトピックから示唆を受け、第1庇護国であるインドの亡命チベット社会から、日本や欧米といった第三国へ「留学」という形態で移動するチベット留学生(難民)をその一つの事例として扱おうというものです。これは、難民の2次移動に伴う移民化の意義を探るという、今日的に重要な視点からの研究であるといえます。その学術的意義もさることながら、日本にいる「難民」状態にありながらも「難民」としての認定申請手続きをとらない人々についても、多くの示唆を与えてくれる研究になるものと期待されます。

 

 山本香さんの研究は、トルコにおけるシリア難民の学校運営に関してすでに一定の研究成果を蓄積しながらも、それを踏まえて問題意識をさらに洗練させて「難民間のコミュニティ形成に果たす学校の役割」をテーマに取り組もうとするものです。研究の目的、意義、構想がはっきりと示されていること、これまで行ってきた自身の研究からの継続性・発展性が明確であること、難民の教育という分野において有用な知見が得られることが期待される部分などが高く評価されました。また、実務者の観点からも、これまでの「支援される対象」としての受動的な・弱い難民像ではなく、主体的に行動するアクターとしての難民像を研究で明らかにしていこうとする研究意欲に高い評価がつきました。

 

 渡貫諒さんの研究は、「無国籍者」の法学的研究において、これまでの国際法を通じたアプローチの限界点、つまり「国家が無国籍者の認定に消極的であるという問題の解決に結びつかない」という部分に注目し、そこから、国内法制からの無国籍者の保護理論の構築をめざすものです。野心的で独創性あるテーマ設定とアプローチを採用したことが高く評価され、国家論の検討などの法理論研究と判例分析に主に取り組むということで、理論研究からの学術上の貢献度の大きさに期待が集まりました。他方で、無国籍者が抱える構造的問題や法的地位を学術的に解明していくことで、国家による無国籍者の受入れの在り方を考えていきたいという研究意欲も見せており、無国籍の解決へ向けた新たな理論的枠組みを提供しうるのではという実務面からの期待も寄せられました。

 

 以上4組の受賞者の研究は、今後の日本における難民研究の発展に十分に寄与しうるもの、また実社会の難民問題への貢献度も高いものになると評価され、受賞に至りました。

 

以上

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以下の通り第二回若手難民研究者奨励賞受賞式を行いました。


【難民研究フォーラム 第二回若手難民研究者奨励賞 受賞式】

2014年 719日(土)14:00~

会場:真如苑 友心院ビル

次第:

● 難民研究フォーラム代表 挨拶(難民研究フォーラム世話人 神奈川大学講師 藤本 俊明)

● 難民研究フォーラムおよび本事業の紹介(難民研究フォーラム 世話人 石井 宏明)

● 受賞者による研究内容発表

● 選考委員会による応募状況の報告及び講評(選考委員代表 藤本 俊明)

● 表彰(賞状の授与)

● 真如苑代表 挨拶(真如苑 社会交流部 部長 太田 一郎)

● 記念撮影

● 懇親会

● 友心院施設の見学


《第一部》「第一回若手難民研究者奨励賞」受賞者による研究成果報告   

 

・難民の地位に関する条約第33条2項をめぐる国際法の理論:庇護とsurrogacyの視点からの検討/加藤雄大(東北大学法学研究科)

 

・移動する人々と第三国定住制度:難民の行き先が日本になるとき/三浦純子(東京大学総合文化研究科・日本学術振興会特別研究員)

 2010年より始まった日本の第三国定住制度の対象となるミャンマー難民が庇護されるタイのキャンプで調査を行い、日本が他国に比べ候補地として選ばれにくい理由を分析。その理由として、1.歴史背景の捉え方によって肯定的・否定的イメージが混在する、2.難民同士のネットワークが小規模、3.2005年の難民登録の停止によりそれ以降に難民として来た人々が第三国定住の申請ができない、ことを挙げ、実地調査に基づいた難民の現状が報告されました。


・ソマリランドとソマリランド・ディアスポラ:国境を越えて展開されるダイナミズムを捉える試みから/須永修枝(東京大学総合文化研究科)

ソマリランドの成立や国家の発展について言及する際のディアスポラの重要性についての調査報告。イギリスロンドンで行われたディアスポラに対するインタビュー調査からは、ディアスポラがその資金力のためにソマリランドにおける開発・政治に対し大きな影響力を持ち、さらにはアイデンティティーの関わりから国家承認のための活動を主動していることが、その重要性の根拠としてあげられるとの考察がされました。

・就労現場におけるベトナム難民の受け入れと町工場が果たした役割に関する一考察:兵庫県姫路市・神戸市長田を事例に/瀬戸徐映里奈(京都大学農学研究科)・野上恵美(神戸大学国際文化学研究科)

 

《第二部》

1.基調講演: ブライアン・バーバー (アジア太平洋難民の権利ネットワーク(APRRN)リーガルエイド/アドボカシー分科会議長)

アジア太平洋地域の難民保護の現状を、各国が抱える問題点を踏まえて考察し、法的保護と法律の実行の重要性を話されました。そして、日本や韓国、フィリピンがロールモデルとなることの意義を踏まえ、必要とされる取り組み、地域間、市民社会同士、そして政府や国際機関とが協力し、さらなる法改正や包括的保護が求められると話されました。

 

2.発表・パネルディスカッション

フィリピン:無国籍者の状況と難民・無国籍認定制度の導入/付月(茨城大学准教授、無国籍ネットワーク)

フィリピンにおける無国籍者保護について、1940年に法律上では無国籍認定が認められてきた先進的法律的取り組みの歴史的背景と、その一方で実務においては、近年になってようやく調査・把握され始めた無国籍者の状況と保護の現状を考察されました。そして、日本の難民保護制度への示唆として、無国籍条約への加盟が難民保護の向上につながると話されました。


韓国:難民法の制定、難民支援センターの開設、そして第三国定住難民受け入れへの動き/松岡佳奈子(難民研究フォーラム事務局・研究員)

韓国における難民の現状と、アジアで初めての試みとなる独立した難民法制度の制定経緯と概要が説明されました。また、去年開設された難民センターについても、日本との比較も交え紹介され、さらに今後の難民制度の展望として、第三国定住受入れに向けた動きなど、人権先進国家を目指す韓国の取り組みを話されました。

 

日本:難民認定制度の現状と課題/難波満(弁護士)

難民申請に関わる実務家の観点から、年々厳しくなる日本の難民認定の現状が話されました。具体的な事例を通して、難民申請者がおかれる厳しい環境が話されたほか、日本の法制度の問題点が、異議・収容・生活保障の側面から多角的かつ詳細に解説され、難民保護の抱える課題が共有されました。

 

ゲストパネリスト:ヨンビ・トナ(韓国光州大学専任助教、韓国での難民認定者)

難民としての経験を、ユーモアを含めてお話されつつも、難民認定の障害となる制度的問題点や、難民に対する偏見など、難民の視点でお話しされました。さらには、日本を含めた先進国が難民を生み出す途上国に対してもつ影響力を強調され、難民に対して力をかしてほしいとお話しされました。

この度は、第二回若手難民研究者奨励賞にご応募頂き、誠にありがとうございます。本年度は総勢15組の応募がありました。

選考委員会による厳正な審査の結果、以下四名が第二回若手難民研究者奨励賞受賞者に決定致しました(以下50音順)。

 

土田 千愛  (東京大学総合文化研究科 修士課程)

「大量難民流入における国際難民保護規範と政策実施の乖離 ケニアにおけるソマリア難民保護を中心に

 

三谷 純子  (東京大学総合文化研究科 博士課程)

「『難民/無国籍』状態が長期化した人々の移民化:離郷チベット人の留学と日本」

 

山本 香  (大阪大学大学院人間科学研究科 博士課程)

「難民間のコミュニティ形成に果たす学校の役割 トルコにおけるシリア難民の事例

 

渡貫 諒  (国際基督教大学社会科学研究所 助手)

「国家と個人の結びつきへの再検討:日本における「無国籍者」の公法上の地位と国家作用の役割への検討を通じて」

 

・授賞式について

授賞式を719日(土)14:00から、真如苑友心院ビルにて開催致します。

受賞者の方は必ずご出席下さい。また、受賞されなかった方でも出席して頂けます。

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日時:67日 1330?1630

場所:真如苑友心院ビル

【アジア(フィリピン、韓国)における新たな難民法制度の動きと日本の今後】

1.基調講演: ブライアン・バーバー (アジア太平洋難民の権利ネットワーク(APRRN)リーガルエイド/アドボカシー分科会議長)

2.報告・パネルディスカッション

 フィリピン:無国籍者の状況と難民・無国籍認定制度の導入/付月(茨城大学准教授、無国籍ネットワーク

韓国:難民法の制定、難民支援センターの開設、そして第三国定住難民受け入れへの動き/松岡佳奈子(難民研究フォーラム事務局・研究員)

日本:難民認定制度の現状と課題/難波満(弁護士)

 ゲストパネリスト:ヨンビ・トナ(韓国光州大学専任助教、韓国での難民認定者

モデレーター:藤本 俊明(神奈川大学法学部講師・難民研究フォーラム世話

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日時:6月7日 10:00?12:00
場所:真如苑友心院ビル

<発表内容・発表者>

?難民の地位に関する条約第33条2項をめぐる国際法の理論:庇護とsurrogacyの視点からの検討/加藤雄大(東北大学法学研究科)

 

?移動する人々と第三国定住制度:難民の行き先が日本になるとき/三浦純子(東京大学総合文化研究科・日本学術振興会特別研究員)

 

?ソマリランドとソマリランド・ディアスポラ:国境を越えて展開されるダイナミズムを捉える試みから/須永修枝(東京大学総合文化研究科)

 

?就労現場におけるベトナム難民の受け入れと町工場が果たした役割に関する一考察:兵庫県姫路市・神戸市長田を事例に/瀬戸徐映里奈(京都大学農学研究科)・野上恵美(神戸大学国際文化学研究科)