2016年8月アーカイブ

第4回若手難民研究者奨励賞 選考経過報告(講評)

20166

文責:選考委員会

 

(1)応募状況

今回で第4回目の実施となった奨励事業には、12件の応募がありました。今回も、応募者の専門や研究対象・地域などが多岐にわたり、専攻に関しては、人類学、法律学、国際関係学、社会学、地域研究、開発学、看護学など、研究対象としてはモンゴル、タイ、チベット、ミャンマー(ビルマ)、バングラデシュ、ベトナム、ブータン、シリア、タンザニア、南スーダン難民/国内避難民、研究対象地域・調査地としては、日本、モンゴル、タイ、インド、パキスタン、ヨルダン、タンザニア、オーストラリアなどが挙げられていました。

申請者の所属は、昨年同様、大学院生(修士課程/博士課程)が多数を占めましたが、大学教員、研究員の方もいらっしゃいました。応募者の所属の地域的分布としては、首都圏の大学から6名、関西、中部、東北地方の大学から各1名、また、本年は海外からも3名の応募がありました。

 

(2)選考過程

研究・専門分野が異なる研究者(5名)と実務者(1名)から構成される6名の選考委員を選任しました。審査は、1)選考委員による個別審査と、2)考委員会の開催と協議の2段階で進められました。

まず、第一段階として、各選考委員が個別に書類審査を行いました。応募書類および参考資料の内容をもとに、各選考委員が各申請者を次の5つの選考基準項目をもとに点数とコメントをつけました。選考の基準は、【1.研究の目的】【2.研究の独創性】【3.研究の計画性】【4.学問・社会への貢献度】【5.研究者の若手度】とし、それぞれの項目を総合的に勘案したうえで採点と順位づけをしました。

第二段階として、選考委員会を開催し、各選考委員の得点および順位付けを基に、選考委員から高い評価を受けた応募者について、選考委員全員で一人ひとりの申請内容を協議し、受賞者の選定を行いました。

 

(3)全体講評

全体的な傾向としては、昨年同様1)既存究にはなかなか見られない、斬新な専門やアプローチで難民研究に取り組もうとする申請、また2)難民の主体性やレジリエンスに焦点を当てた、難民自身の視点を重視した難民研究を志す申請が多く見受けられ、引き続き日本における難民研究のすそ野の広がりと既存の研究領域を越えたの難民研究の可能性を垣間見ることができました。

 受賞者の選考にあたっては、以下の2点を特に重要な審査項目として選考を行いました。

第一に、研究の意義、目的、研究手法、研究計画が明確であり、それらの間に整合性や研究実績があるか、それによって来年4月末までという短期間に学術的な成果論文を完成させられるかという判断です。本奨励賞の選考の特色として、研究者のみならず実務者が選考委員に入っているため、研究と実務の双方の観点から、研究テーマや研究方法、調査内容の妥当性や実証可能性が厳しく審査されました。

第二に、難民研究に対する学術的貢献度と、実際の難民状況の解明や改善に資するかという社会的貢献度についても議論されました。難民研究の特性にかんがみ、for refugees(難民のための難民の視点に立った研究か、難民の権利保護に資する研究か、)という観点からも、審査が入りました。


 その結果、以下の4名を受賞者として選出しました。

 

(4)受賞者4名の講評(50音順での発表)

 

1.    小宮理奈(こみやりな):現在タンザニア滞在

(現)国連難民高等弁務官事務所職員/今回研究者として応募:専門は法学、難民保護

難民キャンプにおける法の支配と難民の主体性―タンザニア西部ニャルグス難民キャンプにおける伝統的司法制度の研究を通し、様々な司法形態と、難民キャンプにおける難民の主体的な司法へのアクセスを明らかにする』

・選出理由として:実務も経験されており、研究者としても代替紛争解決に関する知識的基盤等の関連実績があること、申請テーマの学術的貢献度も高く、成果論文が期待できると結論づけた。

   

2.斉藤和美(さいとうかずみ):現在タイ滞在

 タイ国立カセサート大学教員:専攻は文化人類学、地域研究

逃亡と再定住北部タイにおける擬制的難民カヤンの重層的エスノスケープ

 ・選出理由として:申請地域研究に関する知見と蓄積が十分に見受けられること、これまでの論文についても問いと答えが明確であることから成果論文が期待できると結論づけた。

 

3 片雪欄氏(ピョン・ソラン)

 大阪大学大学院人間科学研究科、専攻:人類学

 『インド・チベット難民の生計戦略に関する比較研究北インド・ダラムサラにおける長期化難民と新規難民を事例に―』

 選出理由として:人類学に基礎を置きながら、難民研究史に関して押さえている研究計画。チベット難民に関する研究実績があり、かつ明らかにした問いを継続して研究をされている。成果論文が十分に期待できると結論づけた。

 

4.Munkhbat Dorjsuren (ムンフバトドルジスレン):現在モンゴル在住

 モンゴル国立大学、専攻人権法、難民法、モンゴル法

ゲル地区からの問い移住する民の定住生存戦略と行政との確執に見る権利と政策

 選出理由として:難民の枠を超え、社会の転換期を迎えた社会での移住が抱えるギャップや人権問題を捉え、モンゴルでの政策提言や他の地域での問題にも示唆を持つ、意欲的な研究であった。今回初の学部生の受賞となったが真摯にこの問題に取り組みたいという姿勢を強く感じ、将来への期待が最も高い方であった。 

 

 以上4組の受賞者の研究は、今後の日本における難民研究の発展に十分に寄与しうるもの、また実社会の難民問題への貢献度も高いものになると評価され、またその研究成果を短期間で論文にまとめられる実力が各受賞者にあると判断されたため、受賞に至りました。

以上

 

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2011年の内戦勃発以降増大するシリア難民への対応は、今や国際社会の緊急課題となっています。こうした状況を踏まえ、難民研究フォーラム(RSF)では、79日に公開シンポジウム「増大する難民の受け入れニーズと実態~シリア難民を中心に~」を開催しました(後援:真如苑)。EU・北米・日本の難民受け入れ事情に詳しい専門家をお招きし、各国の現状の比較を通じて、今後の受け入れ政策の展望を検討しました。参加者は140名を超え、難民受け入れに対する関心の高さが伺えるものとなりました。

 

《第一部》「第4回若手難民研究者奨励賞」受賞式及び研究概要報告


公開研究会として、第4回若手難民研究者奨励賞受賞者の表彰と研究概要報告が行われました。

選考結果・講評は[]をご覧ください。           

 

《第二部》公開シンポジウム


1.基調講演

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ドイツにおける難民政策と国内での動き/久保山亮(専修大学兼任講師)

中東での情勢不安により、異なる民族・文化背景を持った難民が増加するドイツでの統合問題について取り上げ、職業訓練等による市場統合へ重点を置いたドイツの難民受け入れ政策が紹介されました。労働力としての難民の受け入れは、受入国側の利益にもなることが示唆され、一連の政策への期待が寄せられました。

 

2.各登壇者発表

EUの難民受け入れの展開と動向/八谷まち子(元九州大学法学研究院教授)

急激な難民の流入により、受け入れの管理・統制が取れずにいるEUでは、トルコとの協力体制強化、犯罪対策部との連携、非EU国との連携等で管理体制の立て直しを行うことが早急な課題として報告されました。

 

北米を中心としたシリア難民受入れ状況/石井宏明(難民支援協会常任理事、難民研究フォーラム話人)

トルコと北米への現地視察から、難民受け入れにおける民間団体の役割の重要性が指摘され、特にカナダの官民連携での受け入れ支援には大きな期待が寄せられました。同時に、難民条約に地理的制限を設けるトルコでは、一時的滞在許可証での受け入れや、食料・高等教育支援が行われていることが言及されました。

 

日本~シリア難民を中心とする難民の受入れの動向/難波満(シリア難民弁護団弁護士)

各国と比較して、日本での難民受け入れが極端に少ない点に関して、厳格な審査基準により認定数が少ないことや、地理的要因や定住支援の不足、言語・文化的な壁により、申請数自体が少ないことが説明されました。

 

3.パネルディスカッション

後半には、モデレーターとして藤本俊明神奈川大学講師が加わり、パネルディスカッションが行われました。参加者からは受け入れ国での難民の社会統合についての質問が多くあげられ、これに対して講演者からは、ドイツでは依然難民受け入れを支持する声が多いこと、北米・ドイツでは就労支援が充実しており、難民の在留国での自立に期待が持てる旨が報告されました。550万近いシリア人が難民状態となっている現状で、傍観者でいることの疑問も提示され、日本での民受け入れの展望についても、一歩ずつでも実践的に行動を起こしてゆく勇気を持つことの重要性が確認されました。


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